がん患者のために医療用かつらを作り続けた美容師の話


NPO法人日本ヘアエピテーゼ協会では、がんと向き合う全国の美容師さんに呼びかけています。


HOME > News

募集しています

いまも病と向き合う美容師さん、また、がんと向き合ってきた美容師さん、あなたの体験を脱毛ケアに役立ててみませんか。美容という仕事を通して、人の助けになっていく。「SHIHOの心」は、そんな福本さんの志を伝える追悼月間です。彼女の言葉を通し、また彼女と交流のあった方々の言葉を通して、ひとりでも多くの「真のカツラ美容師」を育成するのが目的です。ご興味のある方、また、お手伝いいただける美容師の方、ぜひご連絡ください。私たちはひとりでも多くの仲間を集めています。

連絡先 東京03-3440-4572 特定非営利法人・日本ヘアエピテーゼ協会まで


いっしょに学びませんか

DSC01479i.jpg福本さんの遺志を伝える「かつらの学校」。いまでは全国からたくさんの美容師が参加し、髪で悲しむ多くの患者さまのサポートしています。プロのかつら美容師になるために、かつらの取扱いはもちろん、カットやスタイリングや髪のケアまで徹底指導致します。

■ 学習内容
【技術教育/10時間程度 】
1.ウイッグの基礎知識 Ⅰ(使い方・扱い方)
2.ウイッグの基礎知識 Ⅱ(種類と構造)
3.ウイッグの基礎知識 Ⅲ(素材の見分け方と分類)
4.ウイッグの修理 知識Ⅰ(毛絡みの修正)
5.ウイッグの修理 知識Ⅱ(サイズの調整)
6.ウイッグの修理 知識Ⅰ(スタイリング方法)
7.ウイッグカットの基礎知識
8.カラーとコーティング(ヘアブリッヂ)
【メディカル教育/6時間程度 】
1.抗がん剤 の基礎知識Ⅰ(種類と副作用)
2.抗がん剤 の基礎知識Ⅱ(脱毛から発毛まで)
3.放射線治療について
4.脱毛症
5.患者様の接し方とマナー

■認定証等交付:“全講習終了後、確認テストに合格した受講者は、主催団体より“再現美容師の認定証”が交付されます。
■受講資格:美容師・理容師の方
■受講料: 27,000円

志穂さんからのメッセージ 雑誌『致知』 より

ローザ・シュライフェ。私の運営する美容室は、ピンクのリボンを意味するこのドイツ語をお店の名として掲げています。
2年半前、京都の自宅を改装して始めたこの美容室は、口コミでお客様の輪が広がり、いまでは遠く沖縄から足を運んでくださる方までいらっしゃいます。

ピンクリボンは、乳がんの早期発見を促し、撲滅を目指す啓発運動のシンボルマークです。お店には、抗がん剤の副作用で髪の毛が抜けてしまった方が全国から相談に来られ、私は通常の理美容だけでなく、持参されたカツラのカットも承っています。人工の毛はどうしても違和感があるため、そこにハサミを入れて自然に、おしゃれに仕上げ、外に出る勇気を取り戻すお手伝いをしているのです。

大切な体に手術の痕跡が残る上に、髪が抜けてしまうことは、女性にとっては大変なショックです。人目が気になり、殻に閉じこもってしまう方も少なくありません。

実は私も、3年前に乳がんを発病しました。薬の副作用で初めて髪が抜けた時はとても惨めで、鏡を見るたびに泣いていました。それだけに、カツラのカットを通じて皆さんの心の殻を破り、少しでも前向きな気持ちを取り戻していただきたいのです。

カットの最中に、それまで抱えていた悩みを打ち明けて涙を流される方もいらっしゃいます。「髪形を変えることができて嬉(うれ)しい」「これでまた職場に復帰できる」と笑顔でお店を後にされることが、何より私の生きるパワーになっています。一生続くといわれた治療も、いまでは生きていく一部として、プラスに受け止められるようになりました。

私はもともと美容師にあこがれていたわけではありません。高校時代に父親の商売が傾き、別れて暮らすことになった両親を何とか元に戻したい、そのために手に職を付けたいと考えてこの道に入ったのです。
美容の仕事はとてもハードですが、早く一人前になりたい一心で、ひたすら前を見て頑張りました。よいオーナーにも恵まれ、3年でひと通りの技術を身につけた後、いくつかのお店で修業を積みました。
幸いにも家族はその間に再び一緒になることができ、私は職場で出会った男性と結婚。いずれ二人でお店を持ちたいと考えて、子育て中も美容の仕事を続けていました。

体に異変が生じたのはその頃でした。疲れが酷(ひど)く、肩の凝りや、腰痛からくる足の痺(しび)れがいつまでもとれないのです。知り合いの紹介で鍼(はり)治療を試みましたが、一向によくならず、逆に体はどんどん痩(や)せ、腰の痛みが酷くてとうとう歩けなくなってしまいました。
母に促されて病院で検査をうけると、乳がんの細胞が検出されました。腰の痛みはそれが転移したためだろうとのこと、28歳の冬でした。

がん? 転移? 思いもよらない告知に、頭の中は真っ白になりました。
あぁ私はもう死ぬんだ。あと何か月だろう——そんな思いだけが頭の中を巡りました。

家族を取り戻した、結婚して新しい家を買った、子どもにも恵まれた、さぁこれからという時に、これでは家族がまた潰(つぶ)れるかもしれない。なぜ、いったいどうすれば……。いくら考えても答えは出ません。
結局、自分が何とか生き続けるしかないのです。
気がかりだったのは夫のことでした。二つ年下で当時はまだ26歳。これから人生を開いていく夫の負担になりたくないいっそ別々に歩んだほうがいいのでは、と真剣に悩みました。

「一緒に頑張ればいいだろう」

夫は当たり前のようにそう言ってくれました。
彼は、私の髪が抜けると告げられた時も、自分から先に頭を丸めてきて笑わせ、ショックをやわらげてくれました。夫が医者から、私の余命があと半年と聞かされていたと知ったのは、ずっと後でした。そのことをおくびにも出さずに支え続けてくれた夫。あぁ、自分は一人じゃないんだ。夫の存在が、どれほど生きる力になったことでしょう。

初めてカツラを買った時は、何度もハサミを入れ、ようやく納得できる形にすることができました。それをつけて病院へ行ったところ、待合室の患者さんから声をかけられ、ぜひ自分のカツラもお願いしたいと頼まれました。噂(うわさ)が広まって病院に行くたびに頼まれるようになり、それがきっかけでいまの美容室を始めることになったのです。

お店で出会ったお客様から、私は生きるパワーをたくさんいただきました。人は一人では生きられないことを、いまはつくづく実感しています。
その思いから乳がんの患者会を主宰し、この美容室に皆さんをお招きしてお互いの体験を分かち合っています。
がんになった、髪が抜けたからといって決して人生を諦(あきら)めてはいけない。お互いに支え合って、前向きに人生を歩いていきたいのです。

そんな思いを人に伝えるのは、自分がいきているいま、この時だけです。
以前の私は、明日がくるのを当たり前と思っていました。しかし病気になってからは、将来に夢を描くことや、明日のことをあれこれ考えることがなくなりました。元気に生きているいまを大切にして、精いっぱい楽しみたい。その思いで、私はきょうもお客様と向き合っています。