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自然な医療用ウィッグ

病気以外で苦労しないで

医療用ウィッグで希望のスタイルに

9月は「がん征圧月間」。米子市尾高の美容師、北喬子さん(39)は4月、医療用ウィッグ(かつら)を使って、髪の毛が抜けたがん患者などが希望するヘアスタイルを作り上げる「再現美容師」の資格を取得した。「病気と闘うこと以外で苦労しないでほしい。髪形の面でそのサポートができたら」と前を向き、一般的な仕事として「再現美容師の存在をもっと知ってほしい」と望む。(池田悠平)
鳥取県内2人目の再現美容師になった北さん=米子市尾高のフィアクレー・ヘアーデザイン
20歳で美容師になった北さんは、29歳で「フィアクレー・ヘアーデザイン」(米子市尾高)を開業、日々の仕事にまい進していた。転機は店を開いてから数年後。常連だった女性客がぱったりと訪れなくなり、1年半後に来店した時のことだ。
■目標定め
女性客はがんの治療中で、軽く触れただけで髪の毛が抜けるような状態。当時、知識の乏しかった北さんは要望通りにカットやシャンプーを行ったものの、期待に応えられるような結果とはいかなかった。「『ありがとう』と言われたが、やりきれなかった」と振り返る。
納得できない気持ちが消えないまま過ごしていた中、2020年11月の本紙で、鳥取県初の再現美容師になった横川千歳さんの存在を知った。「これだ」とすぐに連絡を取ったが、横川さんは闘病中。直接話は聞けなかったが、資格取得の目標が定まった。
今年1月、NPO法人日本ヘアエピテーゼ協会がコロナ禍で休講していた資格取得の講座を再開したことを知ると、家族の助言もあってすぐに申し込み。4月に受講し、無事に資格を手に入れた。
■気軽に利用を
本物の髪の毛と見分けがつかないほど精巧なウィッグに仕上げるため、生え際やうなじに産毛を使ったり、違和感のある浮き上がりを防ぐために縫い直したりと、仕事の内容は本業の美容師とは別物。「大変だが一歩成長できた」と胸を張る。資格取得のきっかけになった女性客は現在、元気な姿で店に訪れており、「私ががんになった意味がようやく分かった」と喜んでくれている。
目下の悩みはコロナ禍で、望ましい医療業界との連携がままならないこと。また、再現美容師は全国で50人程度しかおらず、鳥取県内には北さんと横川さんの2人のみ。島根県や岡山県にもいないため「需要はあるだろうが存在を知らない人がほとんど。性別や年齢に関係なく、普段の美容院を訪れるのと同じ感覚で気軽に使ってほしい」と呼びかける。

NPO法人 日本ヘアエピテーゼ協会 報道資料